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2014年度入ゼミ選考志望動機レポートについて

慶應義塾大学経済学部 別所俊一郎研究会

志望動機レポートに書くべきこと

A日程・B日程を問わず,入ゼミ選考では志望動機をまとめたものを選考材料とします.分量はA4にしてA日程では1枚程度,B日程では1枚以上です.

実際の志望動機は人それぞれでしょう.就職活動のためにどうにかしてどこかのゼミには所属しないといけないと思い込んでいるから,部活やサークルの先輩がいるから,ゼミの負担が軽いという噂を信じているから,ゼミの雰囲気が穏やかで和やかだだとだまくらかされたから,経済理論や金融工学にはついていけそうにないから,意識が高い学生が苦手だから,など,さまざまだと思います.しかし,このような本当の理由を書いてはいけません.

志望動機レポートは研究会に採用してもらうための材料の1つであり,また,研究会は教育と研究のための集まりです.したがって,志望動機レポートに書くべきことは「1.何をしたいのか」「2.なぜそれをしたいのか」の2点です.この点で,論文のイントロダクションと似ています(なので,イントロ折り紙も参照のこと).

「何をしたいのか」について,あまり考えていない人もいるかもしれません.しかし,だからといって漠然と「財政の研究がしたい」と書くだけでは不十分です.私の専門領域は日本の地方財政・社会保障・家計行動などに関係するミクロ経済的な実証分析ですから,これに関係するテーマを挙げることが重要です.「消費税率の引上げが景気に与える影響」などのようなマクロ経済学的なテーマを挙げてはいけません.都市と田舎の経済的環境の違い,地方の医療の問題,東北の復興の問題,障害者や生活保護や司法過疎の問題など,新聞や雑誌やテレビなどで取り上げられているさまざまな問題から教員の趣味に一致しそうなものを探してくるほうがよいでしょう.もちろん,日吉の経済学関連の授業で取り上げられたトピックから見つけてくるのもよい方法です.いずれにしても,白紙のWordファイルと向かい合っていてもなにも出てきません.必ずしも研究書を読む必要はないと思いますが,少なくとも新書をななめ読みするくらいの努力は必要です.

「何をしたいのか」が決まったら,「なぜそれをしたいのか」をまとめましょう.ゼミの選考材料ですから,「なぜ」には2つの方向性があります.ひとつは「そのトピックが学術的あるいは政策的あるいは社会的に重要だから」,もうひとつは「個人的な事情で知りたいから,私にとって重要だから」です.後者には,部活やサークルで関係している,親戚に関係者がいる,といったものが該当します.前者の「重要性」を示すのはなかなか難しいです.理論的にはこうなるはずなのになっていない,こういう社会が好ましいと思えるのになっていない,ある地域ではこうなっているのに他の地域ではそうではない,などを書くことができればすばらしいです.しかし,こういったことを書こうと思えば,「何をしたいのか」で選んだトピックについての周辺知識が必要ですし,「学術的に」という観点を選ぶとすると先行研究にどのようなものがあるかを示す必要があります.いずれにしても,「何をしたいのか」を選ぶときに,どういう経緯でそれを選ぼうと思ったのかを思い起こし,そのときの考えの回路をまとめてみるとよいでしょう.そのとき,こういう授業を聞いた,報道をみた,本を読んだ,といったきっかけがあるはずですから,それを覚えておきましょう.

「何をしたいのか」についていろいろと思いつくことがあっても,テーマは一つに絞るべきです.いくつものトピックを挙げることは,「いろいろなことに興味のある好奇心旺盛な学生だ」というプラスの評価につながることもありますが,「よく考えずに思いついたことを並べただけで,目標が定まっていない」というマイナスの評価にもなります.私のゼミの面接では,マイナスの評価になりやすい傾向があります.

「何をしたいのか」と「なぜそれをしたいのか」が決まったら,「したいこと」を選ぶきっかけになったことを冒頭に持ってきて,「なぜそれが重要なのか」「何をしたいのか」の順番で書いていきましょう.きっかけになったこと,重要性の説明,したいこと,の3段落構成にすると読みやすくなります.私の研究会は実証分析を行いますから,きっかけやテーマはできるだけ具体的であることが望ましいです.具体的であれば,状況を説明したりしているうちにA4で1枚くらいはすぐに埋まるのではないでしょうか.